認知症④~犬と猫との違い~

猫さんの認知症について触れたいと思います。
猫さんの症状の一部を紹介しますが、前回までに書いた犬の症状の説明と、基本的には同じです。

猫さんの認知症も、おおむね小型犬と同様で、10歳を超えてきたら1/4くらいの子で、15~16歳を超えてきたらおよそ半数の子で認知機能の低下が認められるという報告があります。

猫さんの認知症は、動物病院で診察したり、症状の相談を受けることがほとんどありません。

おそらくその理由は、犬の認知症ほど「ダイナミック」な症状を示すことが少ないということがあると思います。
ご家族が病院に相談に来られるような困った状況に、あまりなっていないのだと思われます。
例えば、犬の認知症では、夜鳴きで騒ぎ続けるような状況になってしまうと、ご家族の夜の睡眠が妨げられます。きっと近所迷惑にもなるでしょう。そういったことが猫さんは少ないからだと思います。(実際は、猫でも夜鳴き・無駄鳴きは起こる可能性があります。)

他によく起こる症状には、「ボーっとしていることが増える」「ほぼ一日中寝ている」などがあります。
そもそも、猫さんは健康体であってもよく寝ます。(名前の由来という説まであります。ねこ=寝る子)
もともとよく寝ていることが多いので、よく寝ていてもあまり問題にならないのだと思います。

犬と同様に、トイレの失敗が増えるというのも、認知機能低下に伴ってよく起こるかもしれません。

猫さんの認知症で注目すべきは、若い時ほど、積極的に遊んだりしなくなる可能性があります。これは、犬でも同じ傾向なのですが。
それを、多くの方は「歳をとったから」と理解されています。広い意味ではその通りだと思います。

これらの症状を、認知症ととらえて治療を進めていく前に、病気の可能性を検討すべきです。

例えば、整形外科的な問題があって、トイレにすぐに行けない/トイレにうまく入れないのかもしれません。
膀胱炎があったり、尿量が多いなどの理由で、トイレに行く回数が増えている、などの可能性も検討する必要があります。
関節が痛ければ、遊びたくても遊べないかもしれません。
高齢の猫さんは、周りの誰もが気づかないうちに腎臓の機能が低下していたりするかもしれません。
内分泌の異常で、異常に鳴いたり、やせてくる症気もあります。
そういった異常は、健康診断で見つけてあげる必要があると考えています。

猫さんは犬よりも、体調や行動の変化が飼い主さんに見えにくいと思います。
そもそも、人間と一緒に何かをすることが、犬よりも少ないはずです。一緒に散歩やお出かけに行かないことが多いはず。
となると、猫さんがだんだん遊びなどに興味を持たなくなっていることを、歳と考えてしまうと、変化は自然なものとして受け入れられていることが多いのだと思います。

これは認知症に限らないことですが、猫さんにとって健康診断って、とても大事だと思います。
健康体だと飼い主さんが考えていた子に、健康診断で病気が見つかってくることはとても多いです。
(もちろん、犬の健康診断も大事です。)

さて、次回から、犬や猫への認知症治療の概要をお話ししたいと思います。
お読みくださり、ありがとうございました。